校正とは一体どんな仕事?現場のプロが流れとやり方を徹底解説します
たまに耳にする「校正」という言葉。一体どんな仕事かきちんと理解していますか?
最近テレビドラマで取り上げられたことで話題になった「校閲」という言葉と混同されがちですが、校正と校閲は似て非なるものです。
いずれにしても、皆さんが手にする出版物が世に出るためには欠かせないものです。
最近では元の原稿もデジタルデータで作成されることが多いため、データ上で行うデジタル校正も活用されていますが、限界があるため従来のアナログ校正の重要性は依然として失われていません。
ここでは知られざる校正の世界を、当社YUIDEAの事例もご紹介しながら解説します。
1.校正とは
書籍やカタログなどの印刷物を製作する過程で、実際に印刷をする前に試し刷りをして、元の原稿と見比べる作業のことです。
2.校正って誰がやるの?
2-1.社内の校正担当者
大手の大規模な出版社だと、校正専任の担当部署が存在します。膨大な量のゲラを処理し、信頼を守るために確かな品質管理が求められるので、多いところではなんと60人もの校正のプロが常駐し、日夜原稿に目を光らせているのです。
『地味にスゴイ! 校閲ガール・河野悦子』としてドラマにもなった漫画「校閲ガール」の主人公、河野悦子が所属していたのもこのパターンですね。こちらは”校正”ではなく”校閲”ですが、どちらも同じ部署に機能が属することが多いようです。
2-2.出版社の編集者
中小企業だと編集者が校正を担当することがよくあります。
2-3.制作会社の担当者
印刷物を制作会社に外注している場合、外注先が担当することが多いです。上記のように編集者が担当したり、制作会社内に校正担当者がいたり、外部のプロ校正者に委託したりと制作会社によって対応は異なります。
YUIDEAでも社内の担当者がディレクションしつつ、信頼と実績のあるプロ校正者と連携しながら正確かつ迅速な校正を行っています。
2-4.校正専門会社に委託
あまり知られていないことですが、専門で校正を請け負っている会社もあります。ニッチな分野なので数は多くないですが、長い経験と豊富な実績をもっていて信頼ができます。
2-5.フリーのプロ校正者に依頼
校正のプロとしてフリーランスで仕事を請け負っている方もいらっしゃいます。校正に必要な人員は出版物の発行状況によって異なるので、普段は自社内で賄っている出版社や制作会社が、繁忙期になるとこうしたフリーランスのプロ校正者に依頼することがあります。
3.「校正」と「校閲」の違い
3-1.校正は元の原稿と試し刷りを見比べる
上述したように、校正は元の原稿と試し刷り(ゲラ)を見比べて誤りを修正する作業です。そのため、文字だけでなく、レイアウトや色など文字以外の部分も見る必要があります。
3-2.校閲は原稿そのものを見る
校閲は文字の誤字・脱字や表現の誤りをチェックして修正する作業です。これを怠ると読者にとって読みにくさが発生するだけでなく、場合によっては発行側の意図しない誤った情報が発信されてしまう恐れもあります。
4.校正の具体的な流れ
4-1.原稿を受け取り、ゲラ刷りをする
社内の編集担当や出版社などから校正の依頼を受けます。ここで重要なのは、校正の方針やルールをきちんと確認することです。漫然と誤りを探していたのでは、時間だけがかかり、正確性も落ちてしまいますので、また、レイアウトや文言の表記については案件ごとに一定のルールが存在します。どこをどのように見るべきなのかと校正ルールについては、依頼元に事前に確認しておき、複数人のチームで校正を行うときにはメンバー内でも共有しておく必要があります。
YUIDEAではカタログや定期媒体の制作を得意としており、長くお付き合いさせて頂くクライアント様が多くいますが、それぞれで校正ルールブックを作成しています。担当者をできるだけ固定し、リーダーがディレクションを行って版を重ねるごとにアップデートし精度を高めています。
4-2.原稿とゲラ刷りを突き合わせて校正を行う
・ゲラ刷り
ゲラとは校正を行うための試し刷りのことです(語源は英語の「Galley」(ガレー船)だそうです。 ※詳しくはこちら→名作で読む印刷用語)校正紙とも言います。
・突き合わせ
元の原稿とゲラ(校正紙)を読み比べることを「突き合わせ」といいます。
・赤字入れ
校正によって誤りが発生した場合は、校正紙に直接修正内容を書き込みます。この時はわかりやすいように必ず赤ペンで修正を入れるのがセオリーです。また、わかりやすいように独特の記号が用いられます。
・素読み
原稿と突き合わせずに、ゲラだけを読む作業を素読み(すよみ)と言います。そのページ単体で見て、違和感や誤植などがないかをチェックします。校閲に近い工程と言えます。
・あおり校正
原稿とゲラを重ね合わせて、何度も素早くめくり、違いを見比べる作業です。最近はPDFなどのデジタルデータを印刷することが多くなっていますが、原稿と出力した校正紙のサイズを合わせることが重要です。特に再校以降の段階で、赤字で修正を入れた部分以外の誤りを発見することを目的とします。並べて見比べても気づかなかった箇所で間違いが発覚することも多くあります。2つを見比べて違いを修正する校正の真骨頂ともいえる職人技でしょう。
4-3.初校→再校→三校と校正を重ねる
校正は失敗の許されない作業です。精度を高めるために、何度も繰り返し工程を重ねることが多くあります。最初に元の原稿とゲラを見比べる作業を初校と言います。続く再校では、初校で入れた赤字を元に修正を行ったゲラ(再校紙)と初校と見比べて、修正がきちんと反映されているかをチェックします。更に、再校で行った修正が反映されているかチェックするために三校を行う、というのが一般的なステップです。これよりも回数が少なかったり、万全を期すために、三校→四校→・・・と更に回数を重ねたりと、校正を行う体制や、印刷物によって変わってきます。
5.印刷、出版後に誤りが見つかったときの3つの対応
どんなに丁寧に校正を重ねても、人間ですからミスが起こることもあります。その場合は以下のような方法で迅速かつ真摯に対応をすべきです。
5-1.正誤表を同封する
印刷物が読者の手に届く流通前の段階であれば、間違っている箇所と正しい表記をセットにした正誤表を同封することがあります。
5-2.ホームページなどに正誤情報を掲載する
印刷物が既に流通してしまった場合、自社のホームページなどがあれば、”お詫び”として正誤情報を掲載するという方法があります。とはいえ、インターネットにアクセスできない環境にある方や、その情報に気づかない方も多くいることも想定しておく必要があるでしょう。
5-3.印刷し直す
金額の誤記や人命に関わるような致命的なミスの場合は、正しいものを印刷し直す必要が出てくるかもしれません。発行部数が多いときは多大な損失が出ますので、できれば避けたいところです。
6.まとめ
いかがでしたか。校正は印刷物の発行元の信用と読者の安心のために非常に重要な仕事です。特にデジタル化が進み、各工程が簡略化された今だからこそ、チェック体制もおろそかになり、ミスが見過ごされがちだと感じます。
世の中が変わっても、誰かの思いを誰かに伝えるという印刷物の本質は変わっていないとYUIDEAは考え、日々正確な校正ができるように努めています。
これを読んで、校正について少しでも理解が深まったなら幸いです。