商品カタログ写真の権利は誰のもの? ~その1~


こんにちは。企業法務を担当しているMickeyです。
今回はカタログ制作にあたって、実際に寄せられた問い合わせの中から、著作権など知的財産権に関するものをご紹介します。
第一回は、カタログで使用する写真についてです。

 

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「『カタログに使った商品写真を他に流用するけどいいよね』と
クライアントに言われたのですが、問題ありませんか?」

「『以前の制作会社で作成したカタログに掲載の写真をそのまま使ってください』と
言われたのですが、問題ありませんか?」

これらは、いずれも実際に当社の社員からあった問い合わせです。
この問い合わせの背景には
「商品カタログの写真は誰が撮っても同じでしょ」
「お金を払ったのはこちらなので、自分たちのものだ。どう使おうが勝手でしょ」
という考えがあるように思います。

カタログの写真は「著作物」か?

「商品カタログの写真は誰が撮っても同じでしょ」というコメントには、
商品カタログ用の写真には著作権はない(著作物でない)という考えが
見え隠れしているようです。
はたして、商品カタログ写真には著作物性はないのでしょうか?

著作権法第10条では、著作物の例示として「写真」があげられています。
しかし、すべての写真がイコール著作物というわけではありません。
たとえば、自動証明写真や監視カメラで撮った写真を著作物だと
主張する人はいないでしょう。
では、著作物か著作物でないかを分けるのは何なのでしょうか?
著作権法第2条で、著作物は、次のとおり定義されています。

——————————————————————————-
「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、
文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう」
——————————————————————————-

つまり、著作物かどうかは「創作的に表現したもの≒クリエイティブなもの」
であるかどうかがポイントとなるのです。
例をあげると、著名な写真家・カメラマンの写真集の写真は、
間違いなく著作物性があると言えるでしょう。
では、商品カタログに掲載されている写真、
その中でも「物撮り」と言われる商品単独の写真も
「創作的な表現≒クリエイティブな表現」であり、
著作物と言えるのでしょうか?

結論から言うと、YES です。

photo2

商品カタログ写真の著作物性が争点の一つとなった平成7年の裁判で、
大阪地方裁判所は、商品カタログ写真の著作物性を次のとおり認めました。
少し長いですが、引用します。
——————————————————————————-
「被写体の選定、構図の決定、光量の調整等、写真撮影の諸要素の全部又は一部に
製作者の個性の反映としての精神活動(ただし、それは特殊なものでなく、「考え、
気持ち」程度でよい。)が創作的に表現されている写真は著作物である」
「静的な対象物の場合、静物、動物にかかわらず、撮影者があらかじめアレンジした
全体を調和のあるイメージとして創造するように撮影するときは、被写体の配列、
被写体と背景との関係(コントラストや色彩の調和)、アレンジといった要素の選択が
撮影者の重要な創作行為となってくる」
「本件カタログの各写真は、(中略)資材の配置や背景との調和、ライティング等に
工夫をすることによって、一定のアレンジを加え、全体として調和のあるイメージを
創造することに撮影者の創作活動の重点がある」
「本件カタログの制作意図を達成するために、被写体の配置の仕方、構図のとり方、
さらには複数の写真を合成する手法等に製作者独自の創造性が認められる写真である」
(大阪地裁 平成4(ワ)1958 より)
——————————————————————————-
「思想・感情の表現」は撮影の際の「考え・気持ち」程度で認められ、
また、多くのカタログ制作の現場では、商品撮影の際に
「商品の配置や構図、背景とのコントラストや色彩の調和」
に工夫を凝らしているでしょうから、モデルを使った写真やイメージ写真だけでなく、
いわゆる「物撮り」と言われる商品単独の写真など、
ほとんどの商品カタログ写真は著作物(創作的に表現したもの)である、
と言ってよいでしょう。

個人的にも、商品カタログ写真は、自動証明写真等と同列に扱われるべきではない
と思いますので、妥当な結論であると考えます。
(何しろ、著作権法では、こどもの落書きにも著作物性を認める、
すなわち、創作物であるとされるのですし)

以上のとおり、ほとんどの商品カタログ写真は、
「思想又は感情を創作的に表現したもの」であり、著作物なのですから、
そこには「著作権」があります。

photo3

ですから、冒頭の質問に立ち返ると、
カタログに使った商品写真を他に流用する場合や、
以前の制作会社で作成したカタログに掲載の写真を流用する場合は、
権利がどこにあるかを判断しなければならない、ということになります。
※モデルを使った写真の場合は、権利関係がより複雑になりますので、
さらに注意が必要です。

次回は「商品カタログ写真の権利は誰のものか」を考え、
冒頭の質問への回答をお伝えしたいと思います。

(次回につづく)

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